更年期のゆらぎ、鍛えて整える。
パーソナルトレーニングが「支える」体の変化
会議室、エアコンはしっかり効いているのに、資料を読んでいる途中で急に顔がカーッと熱くなる。汗がにじんで、隣の人に気づかれないようにハンカチでそっと押さえる。そんな瞬間、ありませんか。
先日、Nexfitに通ってくださっている50代の経営者の方が、こうおっしゃったんですよ。
これ、実は更年期に起こりやすい「ホットフラッシュ」という症状なんです。エストロゲンというホルモンが減っていく時期に、体温調節がうまくいかなくなって起こると言われています。
私はトレーナーであって医師ではありませんから、これを「治す」とは言えません。ホルモン補充療法の代わりになるものでもない。ただ、レジスタンストレーニング――筋力を使うトレーニングが、この時期の体を支える力になり得るという研究が、いくつも出てきているんです。
Nexfitには、経営者や医師、士業の方など、40〜60代のビジネスパーソンが多く通ってくださっています。その中には、こうした更年期特有のゆらぎを抱えながら、仕事も家庭も走り続けている方が少なくありません。「整え、動かし、蘇る」というのは、若い頃の体に戻ろうとする発想ではなく、今のホルモンバランスの中で、いちばん動きやすい状態をつくっていく、という考え方なんです。
閉経後の女性を対象にしたある15週間の研究では、週3回、筋力トレーニングを続けたグループで、中等度以上のホットフラッシュの頻度に大きな変化が見られました。何もしなかったグループとの差は、はっきり出ています。もちろん研究数はまだ多くなく、「絶対にこうなる」と言い切れるものではありません。ただ、注目していい可能性のひとつだと、私は思っています。
ホットフラッシュだけじゃない、5つの土台
私がクライアントさんを見ていて感じるのは、更年期の時期に体を鍛えることが、いくつもの土台を同時に支えているということです。
このどれか一つを狙うというより、全部が少しずつ底上げされていく感覚に近いんです。
特に②の身体機能。椅子からスッと立てる。信号が変わりそうな時に、小走りできる。階段で踏み外さない。こういう「当たり前の動き」が、実はエストロゲンの減少と加齢の両方で、静かに落ちていくんですよ。
以前、60代の医師の方が「階段の上り下りが、なんとなく怖くなった」とおっしゃっていました。怖いというのは痛いということではなく、”踏み外しそう”な感覚だそうです。そこから半年、下半身と体幹を中心に、週2回のペースで一緒にトレーニングを続けてきました。「最近、階段が怖くなくなった気がします」というお声をいただいた時は、本当に嬉しかったですね。
③の骨密度も見逃せません。スクワットやヒップヒンジ、階段昇降のように、筋肉がしっかり骨を引っ張る動きは、骨量を保つ助けになると言われています。ただし、骨粗鬆症や圧迫骨折の既往がある方は、強い前屈や急なひねり、高い衝撃のある動きは避けるべきです。必ず医師に確認いただいた上で、内容を個別に組み立てています。
④の体脂肪については、誤解が多いところです。「筋肉がつけば代謝が上がって、勝手に痩せる」というのは、正直言うと単純化しすぎです。更年期はホルモンの変化に加えて、活動量や睡眠の質も落ちやすい時期。筋力トレーニングに、歩くこと、食事、睡眠、この全部を組み合わせる方が、現実的なんですよ。
⑤の睡眠や気分についても、運動習慣が良い方向に働く可能性は報告されています。ただ、これも筋トレだけで気分の不調に対応できるという話ではありません。動けるようになる、活動量が増える、その積み重ねが心を支える一因になる、というくらいの捉え方が正確だと思います。
実践の目安
実際にNexfitでプログラムを組む時は、次の表くらいのボリューム感を出発点にしています。もちろん、これはあくまで一般的な目安。既往歴や体力、症状の出方によって、内容は一人ひとり変えるべきものです。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 頻度 | 週2〜3回 |
| 強度 | 「あと3〜4回できそう」くらい |
| 回数・セット | 1種目8〜15回×1〜3セット |
| 種目の範囲 | 下半身・背中・胸・体幹・股関節まわりで6〜8種目 |
| 進め方 | 動きが安定してから、回数や重さを少しずつ増やす |
| 併用 | ウォーキングなど週150分程度の活動も合わせて |
ほてりが強く出る日は、室温をしっかり管理して、通気性のいい服装を選び、水分補給と休憩をこまめに取る。それだけでも、トレーニング中の負担はだいぶ違います。症状が強い日に無理して強度を上げるより、負荷やセット数を少し落として、細く長く続けることを優先する。そのほうが、結果的に体は変わっていくと感じています。
閉経後の性器出血、胸の痛み・失神・強い息切れ、長く続く動悸、原因不明の急な体重減少、強い抑うつ感や不安発作――これらがある場合は、自己判断でトレーニングを続けず、婦人科など医療機関にまずご相談ください。
私自身、40年トレーニングを続けてきて、17年、たくさんの生徒さんの”変わる瞬間”を見てきました。更年期は、体が弱っていく一方通行の時期ではないと、私は思っています。ホルモンは確かに変わっていく。でも、それに合わせて体の使い方や鍛え方を整えれば、支えられる部分は思っている以上に多いんです。整えて、動かして、支えていけば、人生の後半戦も、ちゃんとしなやかに歩いていける。
